作詞家:安藤紗々さんのススメ〜2021年推薦曲〜

こんにちは。
12月に入るまでに書こうとしていた、2021年に安藤紗々さんが作詞した曲の紹介文です。

 

「あたためますか?」- 佐竹美奈子(CV:大関英里)

作曲・編曲:小野寺祐輔

youtu.be

佐竹美奈子は、アイドルマスターミリオンライブに登場するアイドル、明るい性格で料理が得意な世話焼き屋さん。
これまでのソロ曲の「SUPER SIZE LOVE!!」や「満極至極フルコォス」では、アップテンポな熱量にのせて得意料理を振舞い、食べきれないほどの元気と愛情を届けてきた。

一方、「あたためますか?」では、気づけたい人と離れていて、遠目から心配している。歌詞にある "チンして食べて" や "あたためますか?"など冷めてしまった料理を "温め直す" 表現からは、そばにいれたらあたたかい料理を作って食べてもらえるのに、というような焦れったさやもどかしさを感じる。
また、「あたためますか?」の歌詞には "?"が頻出する。
タイトルもしかり、大丈夫?、〜ますか?など歌詞中に"?"が多用されている。元気をなくしている相手の様子を気にかけ、投げかける言葉や想いを巡らす姿に彼女のやさしさやあたたかみが溢れている。
相手の心情に寄り添いつつ、持ち前の明るさを見せてくれる愛情たっぷりのソロ曲になっている。

 

「バラツユ」 - TRIGGER (トリガー)

作曲・編曲:村山☆潤

アイドリッシュセブンに登場する男性アイドルグループ TRIGGERの曲。
挑発的に誘惑的な男性の色気を放ってきた彼らに待望のラブバラードがやってきた。
音が綺麗で、一目聞いて好きになった。昨年開催されたTRIGGER初の単独ライブ"VALIANT"。「バラツユ」はピアノ生演奏パートで歌われ、その音色と丁寧に歌い上げる3人の姿を見たらもっと好きになってしまった...。
歌詞では、彼らの高貴さや男気の内にある、湿っぽさや弱さを覗かせてくれる。優しい歌声にのせた想いの強さが切なく、どうして、の問いかけを繰り返すたび胸を締め付けられる。顔の良い男が苦しむ姿は、どうしてこうまで美しいのだろうか...。
TRIGGERのメンバー、八乙女楽(やおとめ がく)は、抱かれたい男No.1である。
八乙女楽には好感を抱いている女性がいる。売れっ子アイドル業の多忙の合間を縫って、どうにかこうにかその女性との距離を縮めようと奮闘してきた。
そんな中、彼女との関係をスキャンダルに悪用されそうになっていることを知り、彼女に迷惑がかからぬよう距離を置くことを伝える。このシーンをアニメ「アイドリッシュセブン Third BEAT!」では、2人の心の機微まで見事に表現していて私は壁に強く頭を打ちつけた。

 

「Ophelia」- ARCANA PROJECT

作曲・編曲:石濱翔

タイトル、歌詞の情景やtragedy(悲劇)といったワードから戯曲ハムレットをモチーフにしているのは明らかである。
オフィーリアとは、戯曲ハムレットの登場人物であり、ハムレット王子の妃候補である。彼女は狂気に囚われ、悲劇を迎えてしまう。
オフィーリアの悲劇を描いた絵画は数多く残されており、その中でもジョン・エヴァレット・ミレーの作品が有名かつ人気が高く、その甘美な美しさに芸術文化や映像作品などに多大な影響を与えた。
戯曲ハムレット内の悲劇を迎える場面は、文学で最も詩的に書かれた場面の一つとして賞賛されている。オフィーリアの悲劇を綴った「Ophelia」の歌詞は、最高峰の文学的作品への挑戦とも受け取れる。
悲劇を奏でるARCANA PRPJECTの歌声は、沈んでいく身体とは裏腹に上へ上へと音が抜けていくように感じる。
禍々しい低音に包まれ、乾いた風が吹くなか、時計のチクタク音が途切れてメロディが終わるのはとても儚い。
歌詞の視覚的効果として、全編通して歌詞のまとまりが四角く囲われて見えるようになっており、ラスト付近では不自然な間隔でスペースが居座っている。まるで息も絶え絶えに歌い続けているかのようだ。

 

「迷わないConquest」も好き。

 

「夢色のミザンセーヌ」 - Fansy♡Pansy

作曲・編曲:酒井拓也・山本恭平

Fansy♡Pansyは、cheer球部に登場する “魅惑のミュージカルユニット” 。
役を演じているのは、高柳知葉さん、駒形友梨さん、陶山恵実里さん、大地葉さん、高橋ミナミさんの5人。声優事情に詳しい方なら歌うまお姉さんが揃っていることに気が付いたことでしょう。
「夢色のミザンセーヌ」は、1曲を通してひとつのミュージカル作品になっている舞台曲。
前作「輝きはここにある」ではおもわず聞き入ってしまう壮大なミュージカル調の力強さで攻めてきたとおもえば、本曲はミュージカルそのものが上演される。
優雅に曲が始まり、1人1人のソロパートでワルツやマーチングソングなど、曲調が変わっていきメンバーそれぞれが魅せてくる。サビでは、歌声が重なり音楽が重なり迫力に磨きがかかる。
二回目、三回目と聴くたびに強い没入感に魅了され、さながらミュージカルの再演を観ているかのように楽しむことができる。

 

「リリィ♡リリィ♡GOGOリリィ」 - 楓・J・ヌーベル & 二川二水 & ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス

作曲:斉藤信治

アサルトリリィの曲で、お騒がせ三人娘のドタバタギャグメロディ。
メロディに負けることのない怒涛の歌詞の応戦が凄まじい。
レコーディング時に、膨大なセリフの量とスピードにチェックする側が聞き取りに苦難を強いられたエピソードには笑いを堪えきれない。
コール&振りコピ推奨曲なのだが、2021年11月に開催された立川では声出しNGのうえ、着席観覧。あまりにも楽しすぎて、立ったろうかな、といけない気持ちが芽生えてしまった...。
このライブではデュエット曲の歌い手をシャッフルするというとんでもないことをしてきて大変驚かされた。

アサルトリリィにはこの他にも「つきあかりのコントラスト」や「Rainbow」など素晴らしいデュエット曲が揃っている。

 

2022年に期待される新曲たち

詳細はまだ出ていないが、3/30にリリースされるCheer球部新規5曲、アサルトリリィ Last Bulletのキャラクターソロ曲19曲の制作が発表されている。
これまでにTVアニメ『アサルトリリィ』の曲は、一柳隊の作詞を安藤紗々さん、ヘルヴォルを吾龍さん、グランエプレを結城アイラさんが担当している。グランエプレ5人のソロ曲は昨年末のライブで披露され、作詞したのは結城アイラさんと公表された。

そして、もうひとつに石川由依さんの朗読劇UTA-KATA vol.2。
vol.1では、安藤さんが作詞を担当していたこともあり、次回作でも関わりがあるのではないかと期待。(UTA-KATAは慎重に進めていくプロジェクトであるため、公演は2023年以降かもしれない。)
vol.1の公演は、どこか異国情緒を感じる小規模な会場で、中世をおもわせる舞台設定の脚本の朗読や、ピアノ演奏と歌に気持ちが安らぎ、不思議と時の流れをゆっくりと感じた。とても贅沢な時間だった。また、あの世界に立ち寄りたい。